黄昏シリーズ

【企画】SEQUIA&NIREZAKIinCHIIHOhighschool【番外編】

 ←アルファサファイアプレイ記録⑦ →キャラ借り企画あとがき
私立 千五百学園!!

―とある山頂にその斜面を切り崩した敷地を有し、全国各地から優秀な生徒たちが集う、全寮制の中高一貫進学校である!
 赤レンガ造りの壁に囲まれた施設群は麓に続くロープウェイ以外に一切の外界接触を断ち、生活のための全てが構内に設けられたそれは、さながら独立した街の様相を呈している。

 そう、この千五百学園はまさに300人超の生徒達を中心に構成された学園都市なのだ!
 
 十代の若者達を中心とした一つの閉鎖社会、ともすればそこには大人社会の縮図がある…ほぼ完全なる生徒自治体制から、はたまたそんなもんカンケーねえ末端有象無象に至るまで、日夜様々な思惑が乱れ飛び、そしてその陰には必ずやすったもんだの騒動あり。
 
 さてそんな学園の新学期、そこにとある二人の出会いあり。
はたしてそれは不穏な嵐の前兆か、それとも小粋な青春の悪戯か…

 物語はここから始まる―




千五百学園②

「…なんであんたがここにいんのよ、久山赤鴉」
「…言ってなかったかしら、楡崎千景さん。あたし、中等部からここの生徒なんだけど。」
 とある放課後の校舎裏、向き合う二人男子女子。
とも来れば、健全な読者諸君は何やら甘酸っぱいものを感じるかもしれない。が、おかしいことがやや少々。
「ていうか、あなた。…男子だったのね。」
 まず片方の男子生徒、肩にかかる程度の髪には緩いウェーブがかかり、整った顔立ちに長い睫毛に清潔感のある制服姿。いかにも王子様然とした美少年である。が、
「あ~ら、アンタこそまさか高校生だとは思わなかったわ。せいぜい生意気な中学生かマセた小学生にしか見えなかったわよ」
 口から出るのはなんとも立派なオネエ言葉。ついでにこれまた辛辣な。しかしながらもう一方の女子、これに眉ひとつ動かさない。
「…確かに、身長は低いけど、体型はそれなりに歳相応のはずよ。」
「乳のデカさを自慢するなら顔とファッションをそれ相応の仕様に仕立て上げてから言いなさい」
「あたしのスペックが世の変態共に需要高いことは自覚してるけど、別にそういうの狙ってるわけじゃないから。単なる趣・味。あなたも同じでしょ。」
 そういう女子は赤みがかったツインテールをドリル状に巻いているという出で立ち。童顔に低身長、高い声にそれなり巨乳。これだけの要素を並べればどこぞの萌えキャラといっても遜色ない。しかしその冷めた瞳と抑揚の少ない口調、ついでにその口をついて出てきた台詞は、彼女のキャラクターがどうあがいても別ベクトル方面にあることを物語っていた。
「しかしながら…世間って、狭いのね…。」
「全くだわ、それには激しく同意ね」
 そう同時にため息をついた、二人が回想する。

 ☆★☆★☆★☆

 事の起こりは、まさにこないだ春休み。とある街中のゲーセンにて二人は出会った。
 セキアは地元の塾に向かうまでの暇つぶし。ニレザキはこの街での買い物帰り。そんな限られた時間の中、この二人が同じ限定景品に目を付けた。それが全ての始まりである。
 察しの通り、二人の闘いは熾烈を極め、当然のごとくその日中に決着がつくことはなかった。二人は後日改めて盤上での決闘を約束したが、それでも中々目標には辿り着かずあらゆるゲームにてその競争は繰り返された。
  しかし、その熱くくだらない闘いもついには終わりを告げる。目標と定めていた商品は、あっさり別の客によって買い取られていったのだ。
 こうして、二人の春休みは終わった。
「「資本主義者め…!」」
 せめてもの心遣いにと店長がくれた高級アイスクリームを共につつきながら。
 まだ少し肌寒い、初春の風が吹き抜ける頃であった。―…

「てゆーか、何であんたあの時に限って妙に熱くなってたのよ。改めて普段見る限りめちゃくちゃ冷めてるし、モノに執着しそうなタイプには見えないわよね」
「…あの景品のぬいぐるみ、なら別だったのよ。だって好きな人にそっくりで抱き枕にできるサイズなんて、そうそう無いでしょ。」
 ちなみにそのぬいぐるみとは、発電する某オレンジ鼠の等身大。
「ちょ、好きな人が電気鼠って、あんたどーゆー趣味してんの、まあらしいっちゃらしいけどさw」
「ただ問題なのはその本人、30過ぎの中年で妻子持ちなのよね。」
「!?」

 ☆★☆★☆★☆

 しばらくそんな他愛のない会話をしていた二人だが、実はお互い真意は別のところにあった。
「…まあ…なんだかんだでこの先、あなたがこの学校に居つくことになるのは変わらない。それなら、今のうちに言っておきたいことがあるわ。」
「奇遇ね、アタシもアンタと同級生になるってことで釘差しときたいことがあるの」
「「……」」
 双方、お互い睨み合う。と、先に赤鴉の方が口を開いた。
「…ご覧のとおり、この学園は小規模。一学年には大体一クラスしかない、だから何かしでかすと一気に学校中に広まるわよ。人口密度こそ低いけど、生徒は皆大体顔見知りだし、進学校っていってもそれなりにバカもいる。…更に、問題起こすと理事してる大人が出しゃばってくるって話だから。」
「気を付けろって?ご親切にどーも☆けど“自由尊重・生徒自治”がモットーな学校のクセに、そんな面があったとはねえ…。あーあ、せーっかくウザい奴らから離れて新天地にやってきたと思ったのに」
「よほどのことがない限り、大丈夫だとは思うけど。あたしも、生徒の中ではそれなりに浮いてる方だけど、何も問題はないし。でもあなたは…それだけじゃ済まなさそうだし。」
「失礼ね、確かにこの性格としゃべり方のせいで変な目で見られることは多かったけど、別に好き好んでトラブル招いてんじゃないのよ!…だからこそ今回は、とりあえずある程度ここになじむまでアタシのこの本性は封印しとくつもり。アタシの話ってのはそれ。明日からしゃべり方行動変わってると思うけど、変に騒ぎ立てないでね!」
「いいわ、わかった。同じクラスにいる以上、お互い波風を立てない騒がない。面倒事になりそうなことは、徹底して避ける。これでいいわね。」
「上等よ、問題ないわ」
 そうして去りゆくこの二人。さてその判断や、凶と出るか吉とでるか…

side:ニレザキ

…とは言ったものの…
「楡崎くん、楡崎くん」
「…何だい委員長」
 今日もいいメガネね。三日目ともなればそろそろ顔くらい覚えてきてるわよ。ていうか今堂々と理科の実験作業中何だけど。
「同じクラスに久山赤鴉って子、いるでしょ?ね、知り合いなの?前から仲良かったの?」
「…単なる顔見知りだっただけだよ、それも偶然。ていうか何で僕と彼女が面識あるって知ってるんだよ」
 てゆーか今全員同じ教室よ。席遠いからいいけど、ヘタすりゃ当人に聞こえるわよ。つか見た目に反してこんな浮いた話題を授業中に振ってくんじゃねーわよ。
「いや~こないだ偶然遠くから見えてさ、君らが二人でいるところ。いや、ただの知り合いなら安心なんだけど…」
「…」
 ああもう、早速厄介事のニオイがする。でもこれはまだ可愛げがある方ね。こいつもヘタレっちゃヘタレっぽいけど気はよさそうな草食系だし。しかしそれにしても―
(なるほどねえ、あの子モテるんだわ。まあ当然っちゃ当然だけど)
それなりな偏差値の進学校っつっても、根本はどこも変わんないのねこーゆーの。むしろ山の上なんて閉鎖空間なら、普通の学校よりこういうことがあっても不思議じゃないかもね。
 もっとも、アタシ自身はそういう気を遣うような面倒はゴメンだけど、まあ傍から見物するくらいなら身近でも悪かないかしら。…

―そんでもって昼休みの寮食堂。
「けどさ、中等部三年間も同じクラスなんだろ?そこまで気にしてるならもう行動に移してもいい頃合いじゃないか?」
 …てかなんで流れでこいつの恋愛相談になんか乗ってんのかしらアタシ。しかも明らかに教室から遠くて人のいない寮食堂に付き合ってまでして。
「できることならもうそうしてるよ!でもあの子全然隙無くて…話しかける機会すら未だ掴めない!」
(あーまあそりゃそうかもね。既に好きな人がいる上に相手がこの調子な優柔不断メガネなら、あの子的にはアウトof眼中だわ)
 しかしこいつも奇特な奴ね。普通いくら可愛くても隙の無さすぎる女子なんて敬遠されがちなのに、モーションはかけずともウダウダ悩み続けるなんて。ま、それほどこいつが真面目で誠実ってことかしら…―って!!(ハッ
何であの子のためにアタシが男値踏みしてやらにゃならんのじゃ!!
「!?楡崎くん!!?」
「―ッ!いやいやいや何でもない、何でもないから無かったことにしてくれ」
「いや、君さっき、」
忘れろ
「…はい。」

「けど…立場上でこそあったけど、君と近しくなれてよかったよ。こんないきなりの相談にまで乗ってくれなんて思わなかった」
「あまり買い被るなよ、こっちは単に転校直後で何としてでもクラスの輪に入らなきゃ先が不安なだけなんだからな」
「いや、それ抜きにしてもここまで頼り甲斐のありそうな奴に会ったのは初めてなんだよ!」
 …どうやらこいつはアタシの中に、他の男子勢とは違う“何か”を見たらしい。
「はは…」
 …この場合、その“何か”とは“中身”だわね、どう考えても。頭抱えるわ全くもう。
「そこで!もののついでで悪いんだが…彼女に近しい君に頼みがある!」
「え!?」

side:セキア

「あの人!?今年転校してきたイケメンの先輩って?」
「どれどれ見えなーい」
「いた!ほんとだ―漫画から出てきたみたい!」

 …全く暇ね。同時に怖いもの知らずだこと。
上級生クラス前の廊下で、こんなに黄色い声出しまくったら、後でどんな目に遭うかわかんないわよ。あたしだって本来静かであるはずの放課後の読書時間、下級生に教室で騒がれるのは気分のいいものじゃないし。当人だって、ここまで迫ってこられたらさすがに心穏やかじゃいられないと思うけど。
 読んでいた本から目を逸らして、ちょっとその方を窺ってみる。

 ていうかもう教室完全に包囲されてるじゃない。どうやって帰るのかしらあいつ。もう廊下側にすら近寄るまいと顔が引きつってるわよ。さあ、鞄を抱えて窓の外を伺い、どうするかしらあのオネエ系男子。
 あ、飛び降りた。全く、そんな逃げ方したら余計騒がれるっていうのに。
 案の定、廊下では黄色い悲鳴と残念そうな声が巻き起こってる。
…全く、しばらくは同じことが続きそうね。
 あたしも奴が飛び降りた窓の外を見てみる。と、その方面には奴以外にも見覚えのある人影。
(あれは…?)
 確かコーラス部の後輩の子…名前はエミカちゃんとか言ってたかしら。パートも学年も違うしそこまでよく知ってるわけじゃないけれど。そして横にいるのは見知らぬ男子、どうでもいい。
 二人立ちながら何か話してる。ことに男子の方が妙に積極的に。
(…なるほど、そういうこと。)
 全くどこもかしこもやってることは変わらない。まああの子は傍から見ても可愛いし、そう珍しいことでもないでしょう。こちらへの影響でいえば、次の部活の日にちょっとした話題が上がってる程度ね。
 さて、外もようやく静かになってきたことだし、さっきの部分からまた読み直さなきゃ。

……しかし。
外ではその予想のはるか斜め上を事態が発生していたのを、赤鴉は知る由も無かった。…

 ☆★☆★☆★☆

「やだっもう関わらないでください!」
「いや、そう言わず一度会ってやるだけでも…」
 先程まで赤鴉が覗いていた窓の下では、引き続き二人の生徒間で押し問答が繰り広げられていた。
「いやよ知ってます!あの人前から部室の周りとかもウロウロしてたし!」
 しばらく押し問答は続けられていたが、とうとう女子の方が相手を振り払い駆けだした。
「ああっちょっと待ってエミちゃああん!!」
 そして慌ててそれを追う男子。放課後すぐの校舎裏を、土煙でも出そうな勢いで駆け抜ける約二名。
ドドドドド…

 ☆★☆★☆★☆

side:ニレザキ

「全くあの委員長、こっちがどんな状況かも知らずに易々と恐ろしい頼み事を…」
 ここしばらく窓から帰寮しなきゃなんないのかしら。いや、駄目ね、一度手を見せてしまった以上明日から絶対マークされてるわ。ああもう厄介、どうしたもんかしr…
「すみませんちょっとそこどいてえええええええぇぇ!!!」
ドドドドドドドド
 え、ちょ、何ですって!?てか何この地響き!?
「はいいいいい!?」
 音の方を見やると、その発信源達は最早至近距離に迫って来てる。
 あわばぶつからんとする所で相手はスピードを落とす、よく見ると下級生らしき女の子。アタシは反射的に転びかけたその子を受け止め…
……あれ?
(ちょっと待ちなさいよ?このシチュエーションはマズ…)

「うわああああぁぁぁ!!!」
 とか考え終わらない内に、もう一人の男子が勢い余ったのか突っ込んできた!?
「「ぎゃあああぁぁ!?」」
千五百学園①
 思わず女の子を受け止めた体制のまま反射的にそいつを避けたらその男子そのまま後ろの茂みにダイブtoブルー!!!
見事なフォーム、ビューリホー。てか何この一連の流れ。いや、それより今気にすべきは…

「……」
「…あ、あの…」
 体勢的には、尻餅ついてる。見知らぬ女の子をお姫様抱っこし損ねたような状態で、だけど。
(マズい。これは最高にマズいわ、この体勢、この状況)
 青ざめつつフラリとアタシは立ち上がる。この状態のままこの場に留まって、いいことなんてあるもんですか。なんか知らないけと危機は回避したし、アタシは帰るわよ!!
 そんな意志を示すべく、校舎沿いの並木に沿って背を向けた。が、
「あ、あの待ってください!」
「…orz」
 案の定、そうはいかないわよねー(泣)
「…うん、悪気はなかったんだ。ごめん、今のは忘れてほしい」
 …どうして言ってることは大したことないのに、こんなに歯が浮くようなセリフになるのかしらアタシの男言葉。もういや自分で墓穴掘ってるみたいで泣きそう。
 しかもちょっとそこのあんた、何目ぇ輝かせてんのよ。
 やめてよ?泣くわよ?
「いえっ助かりました!ず、ずっと困ってたんです、上級生の人から言い寄られてて…最近じゃこういう風に人まで使ってくるから本当に迷惑で…」
(あ、こいつがこの子に迫ろうとしてたわけじゃないのね)
 →頭から茂みに突っ込んだままピクリとも動かない男子A(仮)
 息はあるっぽいし大丈夫かしら。
「な、なら良かったよ。でも大事になると困るし、早めに誰かに相談しときなよ」
 ともかく、ここは無難に忠告をして立ち去るのが吉ね。ぶっちゃけ、他級生同士の痴情のもつれとか知ったこっちゃないわ。さあ、言うことは言ったわ後はダッシュ!
「ああっ待って王子サマーっっ!」
 知らないわよ!!それ絶対人違いだからこれ以上このこと大っぴらにすんじゃないわよ!!?
 遠ざかる情けない悲鳴を背に逃げる。ああもう、ここ数日で散々だわ…。

 ☆★☆★☆★☆

「ああ行っちゃった…」
 猛烈な勢いで逃走する楡崎の後姿を見送り、下級生―エミカは残念そうに呟いた。そしてしばらく一人思案する。
「てか今まで見ない顔ってことは編入生の人かな…?学年章的に高1か…うーん知ってる人はメゾの久山先輩くらいしか
 …いや待て?この手の話は肉食系なソプラノ先輩勢よりも、そのへんあっさりした久山先輩の方が話しやすいかも!?そんでもってうまくいけばストーカー上級生への牽制にもなるかも!?
 そうだ!きっかけなんて自分で創るものだ!次の部活の時早速先輩に話してみよーっ!」
 目まぐるしく変わる表情。ぶっ飛んだ発想。それらを擁する、一人でも保てるハイテンション。…どうやらこれが、このエミカとかいう女子生徒の根本らしい。
 ちなみに人は、親しみを込めてそれをアホの子と言う。
 さてその彼女、二人に対しどう出るか―…

~その後日~

「…で、何よ用って?こちとらしばらく無駄に人と会いたくない気分なんだけど?」
「大したことじゃないわ。あたしはただ頼まれて、あなたに渡すものがあるだけだから。」
「奇遇ね。…幸か不幸かアタシもアンタに渡さなきゃいけないものを預かってるの」
「「……」」
 初日と同じ校舎裏、再びまみえる両者沈黙。
転校間も無くの身でありながらやたらとトラブルに見舞われた楡崎は、さすがに疲労の色が濃い。
が、対する赤鴉の方も心なしかげんなりとしているのはどうしたことか。
 ひとまず、お互いだんまりでは埒が明かない。しばらく似たようなジト目でもって睨み合っていた二人だったが、意を決したのか。後ろ手に隠したものをジャンケンの如く、ほいっと同時に突き出した。
 そう、ほいっと…

「「―ッ!?」」

 ―同じようなハートマーク付きの白封筒を。 

 …しばらくお互いに押し付けられた手元のものを呆然と見やる。
 が、次の瞬間、赤鴉は自分宛ての手紙を何の迷いもなくDustShoot。興味もクソも無いと動きが語る。
「えっちょっ!?セキアちゃん!?」
「あたし、中年以外興味ないから。」
 咎める楡崎、介さぬ赤鴉。
「いや、そういう問題じゃなくてね!こういうのは一応目を通したうえで対応するってのが筋でしょ!?そーしたなら煮るなり焼くなり好きにすりゃいいでしょうよあんなメガネ野郎でもね!!」
「ああ、委員長からだったの。知ってた。」
「知ってたんなら何かしら機会くらいくれてやんなさいよ、それなら今回アタシが巻き込まれることもなかったのにぃぃ!」
「面倒くさい。おじさま以外にくれてやる機会なんてないわ。」
「より面倒くさいことになりかけてんでしょーがあぁぁアタシが!!」
「…ところで、そっちはどうなのよ。後輩の子からの言伝なんだけど。“この間はありがとう”って。」
「あああ不本意にも助ける形になっちゃっただけなのよ…!畜生どいつもこいつもちょっと猫被ってるだけで勘違いして惚れやがって」
「世のキモメン共が聞いたら、泣いて怒り狂いそうな台詞ね。」
 どこまでもドライな赤鴉と対照的に歯ぎしりを続ける楡崎。が、しばらくして暗い含み笑いを不気味に発した後、鋭い眼光でもって顔を上げた。
「はんッ!そっちがその気ならお望み通り出向いてやるわよ、もちろん素のアタシで!!」
「いいのかしら?本性、ばれても。」
 これまでの猫かぶりとは矛盾するその結論に赤鴉は疑問を投げかける。
「知るもんですか!所詮相手は小娘一人!見てくれだけで理想の王子様とか思ってやがるなら、その幻想をぶち壊してやるわ!」
 もちろん、そんな本来不本意であるこだわりなど、いつでも投げ捨てるのがこいつであるが。
「あとこういう女子の告白って、よく友達応援に来てたりするから、気を付けなさいね。」
「ふっくくくく…その時はいっそもう、そいつらもろとも道連れよ…!」
「早々に開き直ってきてるわね、あなた。」

―それとほぼ同じころ、男子寮にて―

「つまり…ろくに話も聞いてもらえないまま逃げられ…更には、なんか見知らぬ男子生徒に割り込まれた、だと…」
 ガキ共には勿体無いほどの、どこぞのホテルロビーの如し踊り場にて何やら数人が寄り集まっている。その中心が、美内すずえタッチの沈痛な面持ちで呟いた。
「さーせんっす先輩…我ら中三生、同級生のよしみをもってしても説得に踏み切れませんでした…」
 周りの連中はその後輩取り巻きのよう。彼らを尻目に、その中心人物はよろりと立ち上がり、更なる嘆きを吐き出す。
「何故だッ…!この文武両道!博識好学!瀟洒闊達そ!して今年度生徒会副部長まで務める力量を持ったこの私!!だのに!!どうしてこうまでして避けられる!?構外活動の度にいつもさりげなくアプローチしているぞ!?公演会だって毎回欠かさず見に行ってるぞ!?寮の窓口には赤いバラを置き逃げしているぞおおおぉぉ!?」
 語気が上がるにつれ彼自身の身振りも大きくなり、果てには「絶望した!!」と言わんばかりに天を仰いで崩れ落ちた。確かに彼自身が自負する通り、本人は見目も良くそれなりにハイスペックな条件を持つ人物であることが推測できる。しかしながら現状を見る限りそのスペックすらも、動作台詞から溢れ出る残念さを引き立てる要素にしかなりえていないようであった。
 とりあえず彼の呼び方は副会長とでもしておこう。面倒くさいし。
「いや、それどう考えても重いとか思われてそうなんすけど。てか避けられてもしゃーないような気もするんすけど」
「まあ普通ビビるわなーイッパシの合唱部員がいきなり二学年も上な、しかもみょーにエリート風吹かせてる高等部生に追っかけされりゃ」
「おいお前らやめて差し上げろ、泣いてらっしゃるぞ」
 対する取り巻き下級生たちの評価は冷めている。むしろ扱いに慣れていそうな雰囲気がある限り、こいつらは日常的な同朋のようである。
「ええいやかましい!貴様らのようなお子様にこの悩みなどわからんのだ!!」
「なら同級生に相談すりゃいーでしょーが」
「だっていじられるの嫌じゃん」
「だめだこいつ」

 そんな調子でも至って大真面目に彼は続ける。
「…ともかく…私自身は手を尽くした。それでも及ばずこうして人の手も借りた。だのに!!これは何かの陰謀か…私がリア充になることを良しとしない何らかの思惑があるのか…!?」
 ↑こんな台詞でも大真面目に続けちゃう。
「おのれその見知らぬ男子生徒とやら、まさかこれを機にエミカ嬢に近付くことなどなかろうな…!」
 思わず出てきたその台詞に、大した意図は無かったろう。が、しばらくして口を開いたは、隅っこで腕組む高1生。
「てかそれなら何かそれっぽい光景こないだ見ましたけど。…てかもしかするとそいつ、うちのクラスの転校生っすわ」
 …つまり赤鴉と楡崎、例の二人の同級生。
「ななな何だと!?どういうことだ!?」
 食いつく副部長及びその周囲。彼は続ける。
「いや、なんかいかにも女子受けしそうな優男が今年入ってきたんすよ。教室の階違う先輩らにはわからんかったかもですけど、うちらの階の女子、下級生含めてえらい騒ぎで。そいつももう途中でビビって逃げ出してて」
「…」
 何の気なしに出される報告、険しくなってく周囲の表情。

「で、帰りの廊下でふと外見たら、なんか知らんけど…そいつがエミちゃんの肩抱いてた」
「……」
 …しばし沈黙、の後、

「……ホーリーシットアルティメットバルス!!」(クワッ
 案の定、肯定的感情など微塵も芽生えるはずなど無いのであった。
 感極まって壁を殴り始めた副会長、それを止める周囲に見る周囲。
「落ち着いて下さい先輩!…てか傍から聞いててもなんか腹立つなそいつ」
「決して嫉妬ではない」
「そう、決して俺もモテたいとか、同じくらいモテたいとか、すごくモテたいとかでは、決してない」
 しばらくして、賢者モードになったのか燃え尽きたポーズで放心する副会長を尻目に、一人が話を切り出した。
「まーおちけつ諸君、そして初心に帰ろう。要するにそいつとエミちゃんがくっつかなきゃいい話だろ?」
「ああ…!せめて奴と同等かそれ以上な立場に立ちたい…!」
「ならちょっと俺らで一計謀りますか、古典的な手だけど。まああいつ見た目からして女みたいだし、言動も見た目通り坊ちゃんだし」
 下級生同士頭を寄せ合い、会議をすること約数分。
「…なるほど、いざという時の頼り甲斐って点で勝負かけりゃこんな先輩にも勝ち目あるかもだ」
「お前それほめてんの?けなしてんの?」
「ともかく、あいつとエミちゃんが会いそうともなれば作戦決行だ。ついでに、動きがなくともなんかむかつくからという理由で決行だ」
「らじゃ」
「よし解散」
 ……そして後には、
「何やら、いろいろと話が逸れていったのは気のせいだろうか…」
 …考える人のポーズで椅子に座り込む、取り残された副会長が約一名。

 ともあれ、それぞれの思惑とともに夜は更ける。

~そして翌日~
side:セキア


「先輩センパイ久山せんぱーい!やりましたよー!!」
 廊下の向こうから大手を振りながら、土煙でも上がりそうな勢いで一人の女子生徒が走ってくる。
「あらエミカちゃん。どうしたの、彼のことで進展でもあったかしら。」
 これほどわかりやすい子も中々いないわね。あと急ブレーキはやめときなさい床がすり減るから。
「はいっ!早速寮ポストにお返事をもらうことができました!これもひとえに先輩のご協力あってこそ、感謝感激雨あられ♪ちなみに内容はー、(イケボ開始)今回そのことについて、君にしっかり話しておきたいことがある。放課後、夜間棟の裏で待っていてくれ(イケボ終了)とのことです!いや~ベタな王道展開によだれが出るうへへ」
 …あいつもう早速ぶち壊しにかかったのか。
「あら良かったじゃない。でも声が大きいわよ。…あなた、どっち方面からもライバル多いってこと、自覚した方がいいんじゃない?」
「変態ストーカーを一匹飼えば、その他有象無象など大した問題ではありません!後は丸めてちぎって投げちぎっては投げ」
 今あなたがちぎっては投げしてるのは当の彼からのお返事よ。
「…うんまあ…応援してる。この件で直に話すようになるまで、あなたがここまでアホの子だとは思ってなかったけれど、だからこそ、展開にも期待が持てるわ。多少の事にもへこたれないでしょうし。」
 現実目の前で無駄にたくましいし。
「もちろんです!私は想い人からもらったものが破損したくらいではへこたれません!」
「やっぱり突っ込むところはそこなのね。もうあなたなら何があっても、大丈夫な気がしてきたわ。
 いってらっしゃ…―!」
 言いかけ途中でふと口を止める。
 …何かしら、この急な違和感。
(―視線…!?)
―なんだか、背中を抜けて窺われている感覚がして、思わず後ろを振り返った。

「?…先輩?」
 心配そうにエミカちゃんがこちらを見やる。話し相手の急な動きに、さしもの彼女も多少は戸惑ったらしい。
「…その放課後の…。あたしもちょっと付き添ってみることにする。邪魔はしないから、安心してね。」
「え、あ、ハイ…でもなんで?」
「念のため、ね。」
 …振り向いたと同時に見えたのは、おびえたようにそそくさと去る生徒の姿。
(…まあ、大したことはできやしないと思うけど―。)
「…全く、溜息が出るわ。」

side:ニレザキ

「…よし、ここが夜間棟ね。…ってか専門校分野にまで手ぇだしてどうなってんのかしらこの学校は。生徒数もそういないのに授業料は私立にしちゃ破格レベルで安いし」
 ま、今回ばかりは人がいないに越したことはないけど。しっかしボロいわね。見方によれば風情あるし使われてる校内施設ってことがわかってるからいいもんの、平地にあったら絶対『ナントカの館』的な怪談名所にされるわよ。
 待ち合わせ場所にした夜間棟の裏側に立って、その外観を眺める。唯一の木造校舎な上に何でかレンガ塀で隔離されてるだけあってか、他の校舎とは一味違う雰囲気だわ。めったに人が来ないって理由だけでここに指定したけど、正直ちょっと間違いだったかも。そら普通なら気味悪がって寄りたくないわよ。
 ともあれ、約束しちゃった以上はここで待たなきゃなんだけど。…

 にしても来ないわね。しばらく経つけど…まさかアタシが場所勘違いした?
 まあ妙に広いしねえこの学校。敷地内にいくつレンガ棟があるのかしら。言ってここは寮のある区域からはちょっとした山道登らなきゃだし、そらたどり着くのに時間もかかる。
 …けど相手はその辺アタシより詳しいはずの在校生よね…うーん帰るにしても呼びつけてるのはこっちだし、どうしたもんかしら。
 とか考えてたら、なんか小さくて硬いものが後頭部にぶち当たってきた。
「いッ…!?」
 何よ!…ってどんぐりか、季節外れな…
 いや待て?これは角度的にも確実に投げられて来てるわよね?
 とか思ってると―
「ヒュー転校生!!こんなところで突っ立って、また誰かと逢引かー!?」

「……」
 …やっぱり出たわよこういう冷やかし連中。これまたご丁寧に違う学年同士連れだって、こっちをのぞき込める寮道に繋がる広場側の塀の上から。しかし揃いも揃ってニヨニヨしやがってむかつくわね。
 ともかく、ここは囃し立てる奴らへの苛立ちは隠しつつ、うまいこと追い払うかするのが先決。どうせ大した連中じゃないわ。適当にあしらっちゃいましょ。
 …しかしただの野次馬にしては妙に緊張した雰囲気でこっちを窺ってるわね。さっさと追い出せればいいけど…

 ☆★☆★☆★☆

 そんな楡崎と対峙する向こうサイドはというと。
「…これミスったっすよ。エミちゃんいませんよ?」
 そう塀の向こうから覗きつつ小声で呟いたのは一番下っ端らしき下級生。他の生徒も、改めて向こうの様子を確認し、予想が外れた現実を目の当たりにして硬直状態。
と、皆して一斉に塀の陰に引っ込むと、唐突に始まる作戦会議。
「…なに俺ら。これ結局、単にあいつオンリーでいるところに見当違いの冷やかし浴びせに来たイタイ奴らな感じ?」
―茫然自失。
「もちつけ。そもそもこの作戦は―
 『奴とエミちゃんが二人きり→からのちょっかいをかけるDQN登場(配役俺ら)→奴ビビって逃げ腰→都合よく通りかかった(呼んできた)副会長先輩が華麗にDQNを退散』
 …という筋書きだったはずだ。つまり今の俺らはヘタレで善良な一般生徒ではない。かつてこの学園が荒れた時に跋扈したという不良の末裔だ。むしろそう見なされなければならない」
―乾坤一擲。
「本気でやらかすにしちゃ、ちょい無理があるけどな。何なんだよこの取って付けたような着崩し不良ルック」
―冷静沈着。
「けどまさか大事にはならないよな…一つ間違えば指導室沙汰じゃん」
―戦々恐々。
「…ここは腹くくれ。そもそもの目的は奴をエミカ嬢に近付けないこと、それ以上のことはせんでいい。ここまで来たからには後には引けねーよ」
―泰然自若。
 そしてそれぞれ、覚悟やらそうでないものやらを決めた面持ちで、再び塀の向こうに顔を出した。が、―
 
「…君らの話だと、ここいらは逢引だとか、そういったことのために使われるのかい?」
「「「「「ぎゃああ!?」」」」」
―暗夜之礫!
 彼らの煮え切らない対応にしびれを切らしたのか、いつの間にか塀のこちら側に回り込んでいた楡崎に背後から話しかけられ、全員仲良く悲鳴を上げる。
(何よ、ギャーとは失礼ね。てかこいつら何をゴチャゴチャと話し込んでたのかしら)
 幸か不幸か、その企みまではバレちゃいない。このまま突っかかってもいいんだが、肝心の彼女がいないんじゃーしょうがない。
 さあどうするか、顔を見合わす男子諸君。
 が、彼らの判断は以外にも早かった。
「て、てめえのこれまで行動から先回りしてたんだよ!編入生の分際でうちンとこの女子生徒手当たり次第に誑かしやがってこのムカつく優男が!!」
「…は?」
 おもむろに一人がズビシ!と言い放ったその言葉、即座に事態を飲み込めず、気だるげに反応楡崎さん。
 それもそうだろ彼自身、なるべくトラブルを避けるべく振る舞っているのがこの現状。
 しかしながらこやつも馬鹿ではない。裏で何があったかこそ知る由無いが、彼らを動かす言い分は察して余りある。
(あーもー全くまた面倒くさい展開になってきたわー…)
  呆れてため息をつく傍らも、この後の展開は嫌でも想像がついた。

 ☆★☆★☆★☆

 …今アタシが置かれている状況を整理し直すと、つまりこういうことになる。
 まず編入間もなく、下級生女子を助けるような形になって一方的に好かれてしまい、ラブレターまでもらってしまった。
 けれどもアタシは知っての通りこんな本性だし、受ける気になんかひっくり返ってもなれない。
 そこで、最早多少のショックは仕方ない・アタシも引かれるの覚悟で暴露して断る心づもりで彼女をここに呼び出したんだけど、そこにやって来たのは頭の軽そうな内部生の野郎共。
 そして現在に至る、って訳だけど―…
「つーか当のエミちゃんだけならまだしもさ、確か別の女子ともわざわざこっそり会ったりしてたって話だが?」
「マジかよ、どんだけ調子こいてんだよこいつ本当に」
 もはや遠慮も何もなくなってきたわねこいつら。無論、気分はよろしいはずないわ。
(まッッッたく、こっちの苦労も本性も知らないで、よく表面だけで僻んでくれるもんだわねえこの暇人共が)
 けど今はとやかく言い合うべきじゃない。本当ならこの時点で舌打ちでもして啖呵を切り始めたいところだけど、今回はそうしちゃいけない理由がある。

 まず一つ。それはアタシがまだ転校間もない編入生であること。限られた区域の狭いコミュニティが基本になるこの学園で、孤立無援になれば困るのはアタシ自身。馴染んでしまえば仕返しなんていつでもできる。それなら今はこいつらに好き放題言わせといて、後でそれをネタにしてじわじわ追い詰めてやった方がやり易い上に賢いし、アタシの性にも合ってる。
 そしてもう一つ。“騒ぎを起こさない”というのは、あいつ―あの無愛想な巨乳ロリと、面と向かって約束しちゃったこと。…これは半分意地の問題だけど。ここで下手に暴れてごらんなさい、『ほら見なさい』とでも言いそうなあの子の表情が目に浮かぶ。こんなことで小馬鹿にされたんじゃアタシのプライドが許さないわよ!とにかく今は気が済むまでわめかせておくしかない。
 そう、今の限りでは。
「おい黙ってないで何とか言えよ!」
 波風立てない、騒がない。せいぜい勝手にピーチク喚いてらっしゃいニワトリ共!
「てか同クラスの女子、なんて言ったかなあのツインドリル。あいつとも妙につるんでることが多いよな」
「そういや初日も何かしゃべくってんの見たぞ。そしたら今度は手紙までやり取りしてたとか聞くし」
 あー畜生、反応無いと見たらあの子のことまで持ち出しやがって!
 さすがにあいつとの関係を疑われるのは不本意極まりないわ。
「…彼女は偶然前からの知り合いだった、それ以上の接点はないよ。あと手紙は別人物からの預かりものだし」
 無難に返すも顔に怒りマーク出てないわよねアタシ?
「あ、わかった同クラスの委員長か、有名だぞそれ。まさか編入生で一番世話になってるくせに隙を見て横槍とかぁ?」
 …クッソ、耐えろ楡崎千景!どうせくだらない言いがかりなんだから、本気にしたら駄目よ。
「今一番近しい且つ彼女と知り合いだったから直々に頼まれたんだよ、大体ここ最近の追っかけだって故意に招いてるわけじゃないことくらいわかるだろ」
 騒ぎ立てない怒らない、最低限の釈明で済ます。それでもそろそろ隠し切れないこのイライラ…
「どーだかな~、悪い気はしないってのが男心ってもんだと思うけど~?」
「ていうか故意じゃねーってんなら普通頼まれても自重しろよな、特にモテ自覚があるってんなら尚更よぉ。そういうこと考えずにホイホイ男女間の仲介とか引き受けんのが調子乗ってるっていうんだよ」
「うわこれ正論ww」
 波風を…立てないとか言ってもッ…!いい加減舌打ちくらいしたくなってきたわこの野郎…
 とかなんとか思いつつも流してる中、奴らの中から爆弾発言が飛び出してくるのにそう時間はかからなかった。
「つか、こんなんじゃ久山の奴が委員長じゃなくてお前になびいたり、なーんてこともあり得てくるんじゃねえの?」

………は?

 い、いい今何ですって!?
「ちょッアンタ達いい加減にしてy…あわわ、彼女はそんな人じゃないだろ!」
 な、何声上擦らせてんのよアタシ!こんなんじゃ余計変な誤解招くじゃない単にビビっただけだとしても!!
「あ、もしかして案外お前の方から狙ってるんだろその反応は」
「はああ!?」
「おいコレまじか、あの子の話出したら明らか反応変わったぞこいつ」
「ななな、何をををを!?」
 ちょっと待ちなさいよ!?アンタら何妄想設定の裏付け的なことしようとしてんの!?
 これは明らかに話の展開がアポロ並のぶっ飛び方をしようとしているのは明らかよね!?
思わず声を荒らげるも、抑えろっつっても無理な相談よ!?
 いやそりゃ今の時点じゃ、あの子といるのが一番楽なのは確かだけど、それで噂立てられんのは全くもってゴメンよ!?
つかこの程度の絡みで恋愛沙汰呼ばわりとか中学生かお前らそうだそういや中学生も混じってた!
どうしろってのよこの状況!?
「待て、何を勘違いしてるか知らないが何でアt、僕が彼女を、」
「今更何言おうが説得力ないぞ編入生」
「いや、俺らが言うのも何だけどさ、自覚持てよお前…」
「あ゛あ゛あ゛!?」
 とりあえずこいつらの暴走をとっとと止めない事には、
 アタシがこの学園で平穏に生きていく未来はない!!

「ああもう…」
『騒ぎになるようなことはしないでね、お互い波風は立てないこと。』
 脳内であの子の声が繰り返される。
(全く…それができればとっくにこんな状況回避してるわよ…)
『面倒になりそうなことは…』
 うるさいわね、もう遅いのよ。
…悪いわね、セキアちゃん。せめて新入りとしての注目が薄れるまでは、無難な人間でいようと思ってたけど。
 でもやっぱり、アタシは結局―
「…“アンタ達”ねぇ…」
「…え?」
 腹から絞り出したようなドス声とそれとは対照的な言葉遣いに、相手方がややたじろぐ。
直後、アタシは今まで抑え込んでいた一言を目いっぱいに放出した。
 
「ごちゃごちゃやかましいのよーーー!!!」 
 そう、やっぱりアタシは結局ねえ、
「どう見られるか」よりも「どうしたいか」の方がとことん重要な人間なのよ!!

 ☆★☆★☆★☆

「大人しく聞いてりゃーあることないこと好き勝手言いやがって!!ふざけんじゃないわよ人がどれだけ気ぃ遣って大人しくしてたと思ってんのよ、にもかかわらずやたら女子にチョッカイかけるけしからん野郎ですって!?上等じゃないのよアタシ本人の葛藤も知らないでさああ!?ていうか何!?セキアちゃんとアタシが何ですって!?何が悲しくてあんな外見だけはイッパシに飾りたてた無愛想の権化と噂立てられなきゃなんないのよ!!あの合法ロリと!?変態じゃあるまいし!!」

 もう体面と騒ぎとか知ったことじゃないわよ!!
 そう言わんばかりに、直前までため込んでたものをここぞとばかりに一気に吐き出す楡崎、いきなりの展開に面喰らう他為す術のない周囲。それでも当人の勢いは止まらない。
 「いくら人目なんて気にしないっつっても、そんな浮いた視線に縛られちゃうんじゃ話が違うわよ!!だいたいねえ!!アンタ達は何なのよ一体!?前々からアタシが気に入らなかったとかどうかは知らないけど、よりにもよって人が珍しく良心的対応に努めようと思ってた矢先に首突っ込んでくるとか何様!?ほっときゃいいでしょ人の事なんて!!アンタ達そんな暇なの!?」
その文句に約一名が反応する。
「は、はあ!?暇じゃねーよ!?こっちだって明日の小テ勉強犠牲にしてこれ頑張ってんだよ!?精一杯やってんだよこれでも!!」
「それ本来犠牲にする側のモンを頑張るべきでしょーが!!つーかわざわざ暇でもない奴らまで出てきてるとか、随分と力の入った嫌がらせだことねえ…!?」
 何だかんだでツッコミを入れつつも、楡崎は彼らに更なる追い打ちをかける。
「え、いやこれは、別にお前への嫌がらせピンポイントってわけじゃ、」
 何やらまた話が飛びそうな気配が滲み出る。それに気づいた別の一人が、これ以上は押すなと双方を牽制しようとするが、
うふふふふふふ……そうまでする気なら…」
時、すでに遅し!
「それ相応の覚悟はしてもらうわよーッッ!!!」
 まさに蛇の如き形相と化した楡崎は、偽不良集団に向かい地を蹴った!
「ひッ!?そ、総員退避―!!」
「逃がさないわよ!!」
 逃げ腰になった彼らの合間を素早く潜り抜け、楡崎は本校舎や寮への通路がある階段側へ回り込む。
と、その手には先程までは無かった何かが。
「あれ、お前何もって…って俺のケータイぃぃ!!?」
「おーっほっほほほ、ケツポケットなんかに入れとくからよ!!さてと…」
 一瞬の隙を付き奪い取ったスマホを手に高笑いした後、人の悪い笑みを浮かべて改めて集団に向き直る。
「最近のスマホって便利よねー、画像とか動画とか果てには漫画とかのデータも入れとけちゃうものね~」
「え、ちょ、まさか?返せよお前!?」
 その発言の意図するところを読み取り、その持ち主が青ざめる。が、その返答はもちろん、
「イ☆ヤ☆よ」
「NOOOOOOOOO-ッッ!!!」 
 悲痛な表情で絶叫する持ち主、更に高笑いする楡崎。
「返して欲しきゃアタシをどうにかすることね!!」
「あ、あの野郎…!?」
 どうやら自分達は、最高にわけのわからない相手を敵に回してしまったらしい。嫌でもそう感じざるを得ない状況で、楡崎を取り囲んだ偽不良集団はそれ以上どう動くべきかわからず、各自右往左往する。
 が、ゆゆしき事態には違いない。彼らは(特にスマホの持ち主は)、当たって砕けろと言わんばかりに勢いよく楡崎に突進した。が、さしもの楡崎、それを見越して彼らの目的・人様のスマホを宙へ放り上げる。
「「「「「うおおおおおおお!!?」」」」」
 全員の視線が一気に其の方へ向いたと同時に、自慢のリーチを利用し一気に足払いをかける。次々に間抜けな悲鳴を上げてもんどりうつ男子諸君。大丈夫だ、下は芝生だからそんなに痛くないぞ!
「ハッ!こちとらこれまでの学校生活、地元の荒れた公立で過ごしてきてんのよ!!オネエ系だからって、変に女々しいとかなよっちいとか思われてたまるもんですか!!
 …と。さて、どうしましょうかこr…」
 そう言いかけ手元を見るも、当然そこに当のスマホはあるはずもなく。
「あっちゃー、そういやさっき囮にした後回収し損ねてたわ。ええと真上に投げたし、その辺に―」
「回収方法も考えずに、簡単にモノなんて投げるもんじゃないわよ。馬鹿なの?」
 探そうと視線を飛ばした背後に、聞き覚えのありすぎる声。
「ってセキアちゃん!?」
「散々忠告したにもかかわらず、大して意味は無かったみたいね。」
 そしてその手には、いつの間に回収したのやら先程投げられたスマホ。
 様々な要因が重なり、バツが悪そうに楡崎は開き直る。
「ハッ、悪かったわね。アタシは人畜無害でいられるようなタマじゃないの」
「別に、大して驚いてもないわ。一応釘こそ刺したけど、所詮期待できそうにない、とも思ってたし。…それにしても、随分と派手にやらかしたのね。」
ここぞとばかりにあたしの事、散々言ってくれたのは気に食わないけど、とも付け加え赤鴉は周囲を俯瞰する。
 話しているうちに、尻餅をついていた周囲がむくむくと起き上がる。
「くそっこんにゃろ…!てか返せ俺のスマホいでででで
 私物とはいえ赤鴉の手からブツをひったくろうとした持ち主は、そのまま手首関節を極められる。
「ていうか何、こいつら。」
 ゴミを見るような視線で赤鴉は問う。彼がそのまま悲鳴を上げ続けるも、手元のメキメキは止まらない。
「知らないわよ。なんか嫌がらせに来たらしいけど?…てかアンタそんな技どこで覚えたのよえげつないわね」
「習ったの。動きを真似ることだけは得意だから。」
 肩をすくめる楡崎にサラッとそう言ってのけると、掴んでいた手首を離し、赤鴉は改めて体勢を立て直した偽不良集団に向き直った。
「…入学してから今まで、こういう輩が幅利かせてるなんて話、聞いたこと無かったけど。それともアタシが知らなかっただけで細々と生き残ってたのかしら。」
「その可能性に一票ね。大して周りに関心持って見てないでしょアンタ。無意識に居ない者扱いしてても普通に納得いくわ」
 その指摘に軽く溜息をついて、赤鴉は集団の方を一瞥する。
「それにしても、どうするのこの事態。…このまま勝手に帰れそうな雰囲気じゃないんだけど。迷惑。」
「引き際見失ってんのはお互い様よ。なんなら人目が出てくる部活終了時刻までにはカタつけようじゃないの」
「アタシ一応仲裁として出てきただけだし、連帯責任とるのは嫌だからね。」
「全く頭固いわね、バレなきゃ済むのよこーゆ―のは」
 そして二人は、事態を適当に収めるべく、改めて顔を見合わせた。

「…ともあれ、一般生徒の野次馬程度ってわけでもないし…。」
「ガチのお馬鹿相手なら、最早遠慮だのは必要ないわよね!!」
なんだかよくわからんが、自分達にとって全くありがたくない未来しか予測できない台詞を並べ立てられ男子諸君、若干引きながらも果敢に二人に問うてかかる。
「ていうかお前ら…二人して一体なんなんだよ!?」
 その問いに、二人は同時に堂々と言い放った。
「「ただのゲーム仲間よ!!」」

千五百学園③

 相手方はまたもや状況を理解できずフリーズする。
ともあれその繰り返しでは埒が明かない、その隙に楡崎、どこぞの変身ヒロインの如く口上を上げる。
「人の逢瀬を囃し立てる、妄想好きな野次馬共!当人個々の思ってることも知らないで邪魔してくるとか迷惑千万!!果てには無関係な知り合いまで巻き込むとか、想像力が足りないわよ!!」
 更に、以外にも赤鴉、ここぞとばかり便乗する。
「ついでに言うと、悪意のために集まった友情は続かない!寄って集って人を妬む暇があるなら、その人を超えるべく努力する方面で団結すれば!?」
 とりあえず最終的に言いたかったことを続けて言い放ったと同時に二人、まるで示し合せていたかの如く相手方をズビシと指差した。
「「何はともあれ、行為に対しては同情の余地無し!!」」
 オネエ全開ニレザキに腹を括ったセキアちゃん。妙に息の合ったこの掛け合い、相手方を気圧するには十分であった。

「こ…こいつら…!?」
 根本的動機が当たってるからこそ、ぐうの音も出ないどうしよう。しかし彼らの方も、最早引き際が見つからない。一人一人の脳裏に、如何にこの状況を収めるかという葛藤がよぎる。
 どうする、このまま逃げるべきか?奴らを道連れにして自分達の名誉と共に散るか?
 ぶっちゃけ一番マシな選択は、全てバラしてあいつらに土下座ルート―
 どうする、どうするんだ俺…!?
奇しくもほぼ全員の心がある意味一つになっていた。だからと言ってどうにもできないこの状況、万事休す―…
 と、赤鴉と楡崎以外の誰もが諦めた瞬間、

「…何してるんだお前ら…?」

 現れたのは、作戦の一部として時間通りに誘導されておきながら、全くもって忘れ去られていた副会長の姿であった。
 
 ☆★☆★☆★☆

「…うん、とりあえずこの状況に至るまでを誰でもいいから句読点含む50字以内で説明したまえ」
 作戦の中核的存在でありながら、全くもって蚊帳の外であった副会長。何やら仮装じみた不良ルックをした後輩共を目の前にしばらく茫然としていたが、我に返り赤鴉達含む周囲全員に状況説明を求めた。
 その問いに赤鴉も同意する。
「…そうね、何か裏があるなら、巻き込まれた側としては聞いておく権利があるわ。…そろそろ出てきても大丈夫よ、エミカちゃん。」
「ひええ…すみません何だか大事になっちゃったみたいで…」
 その呼びかけに、校舎の陰からひょっこり顔を出したのは、もう一人の当事者・エミカちゃん。
そんな彼女のいきなりな登場に楡崎は悲鳴を上げる。
「でえええ何でアンタが!?ってそういや呼び出して待ち合わせてたんだっけ…てことは…アンタ…ここまでのやり取りとか…ずっと見てたってワケ?」
「はっ、ハイ…」
「えええええちょっとどうしたらいいのよアタシもおおおおおお!!」 
 若干震えているようにも見えるエミカを尻目に、最早隠す気も無く楡崎は七転八倒する。
「今更喚いてもしょうがないわよ、最初からばらすつもりだった癖に。ともかく、事のきっかけを説明してほしいんだけど後輩君達。」
「あ、はい…」

 そこから先はまあ…事の運びは簡単だった。
 後輩諸君が説明すること、かくかくしかじかさのよいよい。
「…つまり、アンタ達はこの先輩を立てて、かねてからの片思い相手とくっつけるべく不良生徒としてアタシらに因縁つけてたわけ?」
「まあ、そういうことになるわね。もっとも、ニレさんに対する僻みが手伝った部分もあったでしょうけど。」
 事の顛末を聞き、各々嘆きつ呆れつつ。あるいは楡崎に至っては、最早ネタとして爆笑しそうなところを堪えている始末。
「…お前ら…!私がそう器用に振る舞えるとでも思ったのか!!」
「「「「「すみません、ごもっともです!!!」」」」」
 
 結局彼らは一様に副会長のお叱りを受け、そのまま各自ちりぢりに四散した。
「ちょ、おまえら当人達にちゃんと謝っていけこらー!!」
「あ、いやお気遣いなく、何だかんだでアタシも色々頭に来て仕返しっぽい事しちゃいましたから~…」
「それにしても、あっさり納得されたわね。御膳立てあっても器用に振る舞えないとか。」
「まあ奴らは学年越えて、素で付き合ってる奴らだからね…」
「ま☆きっかけは掴めたし、次からあいつらに大してキャラ偽装する必要はないわね」
 まあ楡崎としては、転校一か月も経たずして早くもおちょくり相手が確保する成り行きとなったようである。今後の彼らの学園生活は、おそらくこれまでにない奇抜さを帯びる運命となることだろう。
 やれやれ…
   
「けれども全く…まさか他愛のない愚痴からこんな騒ぎが起こるとは思わなかったよ…君達にはとんだとばっちりだったろう、本当に済まないよ…」
 改めて周囲に謝罪し副会長、頭を抱えて思わずこぼす。
「しかし大事に至らなかったからよかったものの、こんな事態を許すこととなった自身がふがいないやら情けないやら…」
 気疲れして溜息をつく彼も、また気の良い一般生徒。いつの間にか、彼を敬遠していたエミカもその輪の中に加わって話を聞いている。
 その様子を見て、赤鴉も楡崎も意図せず笑みを見せた。
 最早赤鴉以外の面子にも隠し立てせず、自分の言葉で楡崎は言う。
「まあ、アンタのためにあれだけの後輩が足りない頭を振り回して醜態を演じたのよ。それなりに人望はある、ぐらいの自信持っててもバチは当たんないと思うけど?」
「…確かに、やってくれたことは巨大なお世話だったかもだけどね。」
 赤鴉も同意した。
 そして、話から取り残されているであろう彼女の方へ向き直る。赤鴉を伴って、待ち合わせ現場に着きながらも避難を強いられ、図らずも一部始終を見届けることとなったエミカである。この件で判明したことは、彼女にとっても大きな衝撃だったろう。まだ少し足が震えている。
 今更気を遣っても遅いかもしれないけど、と思いつつ。楡崎は出来る限り優しく彼女にも語りかける。
「それさえ抜けば、まあそれほど悪くない連中よ。この先輩もね。…だからーエミカちゃん…とか言ったっけ。こいつに関しても、もうちょっと考えてあげ―」
 そう言い終えぬ間に…

「ス…素敵…!」
「「…はい?」」

「素敵です!かっこいいです、!!むしろこれからもついて行かせてくださいオネエ様!!」
 勢いよく楡崎の手を取るエミカ嬢、再び無視され副会長。
「えええ!?ちょっとどういうこと!?さっきまで大人しかったの、引いてたからじゃないの!?てか普通引くと思うわよあんな場面展開見れば!?」
「そんなわけないです!!むしろ痺れすぎてしばらく反応できなかったんですよお!!今までこんなタイプの人に出会った事ありませんよ!?乙女の心を持っていながら並の男子以上の強さ、誰にも真似出来ないそこに痺れる憧れるゥ!!!」
「まァーた変な妄想垂れてんじゃないわよこンの脳ミソお花畑のアホの子がああぁーッッ!!!」
「ええッ、そんな、この流れでそれ!?エミカ嬢ー!!」
「あら、残念だったわね。…ま、あなた自身への嫌悪感はなくなったみたいだし、そう悲観することもないと思うけど。
 …それにしても。こいつがやって来て、早々にここまでの騒動だもの。この先もきっと、何か起こるかもくらいの気持ちで居た方がいいかもしれないわね。全く。」

 逃げる楡崎、追うエミカ。そして今度は赤鴉に慰められる副会長。 
 事の終結と共に夕刻を告げるベルが鳴り、彼らはそのまま流れるように寮への帰路についていく。
 けれども彼らの学園生活、未だ始まったばかりなり。

今回出会った人々と共に、お次はどんな騒動が待ち受けるやら―それは、未来の彼ら以外に知る由もなし。
 ともあれ本件はこれにて一件落着、次回の活躍に乞うご期待…

 ☆★☆★☆★☆

―でもって、全て終わった後の夜間棟では…

「はわわ…物凄いものを見てしまった…」
 図らずも、物陰で一部始終を見届けてしまったメガネの委員長が、腰を抜かしたまま取り残されていたとさ…。

 ☆SEE YOU FOR NEXT EPISODE MAYBE☆
関連記事
スポンサーサイト
もくじ  3kaku_s_L.png MAP
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png PIETRA REGINA
もくじ  3kaku_s_L.png 黄昏シリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png junk
もくじ  3kaku_s_L.png 創作メモ
もくじ  3kaku_s_L.png ポケモンネタ
もくじ  3kaku_s_L.png もらいもの
  • 【アルファサファイアプレイ記録⑦】へ
  • 【キャラ借り企画あとがき】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

~ Trackback ~

トラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【アルファサファイアプレイ記録⑦】へ
  • 【キャラ借り企画あとがき】へ